すかしたフィルター

頭の中ってごちゃごちゃしてるよね。

「あそびあい」  感想編

 

「あそびあい」がおもしろい!

 ネタバレと言うほどのネタバレはないはずです。

ざっくりとしたあらすじ

この話の主人公は男子高校生の山下で同級生の小谷に恋をしている。
でもこの小谷という女子高生、ちょっと「フツウ」じゃない。
なにが普通じゃないかというと、まず小谷が誰とでもやりまくる。
冒頭1ページ目から「山下(主人公)のはうしろからがいい」というビッチ発言。
この導入がまた小谷の性格を表してていいのですが、とにかく「フツウ」じゃない。堂々とほかの人とセックスするし、山下がほかの人としても全くなんとも思っていない。
それどころかほかの人のところで「新しいテクを覚えてくれたらあたしもきもちいいし」とのたまう。
山下はそれをぜんぜん受け入れられない。山下にとって「彼女」や「好きな人」は一人だけだし、「セックス」も好きな人とだけするものなんですよね。だからほかの人と簡単にする小谷が許せないし、理解できない。
だから山下はどうにか小谷を振り向かせて、自分だけを見てもらえるように奮闘する。
 はたして山下君の奮闘は身を結ぶのか?

山下にどうしても共感してしまう滑稽なぼくら

  小谷を振り向かせたい山下にすごく共感しながら読んでしまいました。
このマンガのなかで小谷ってめちゃくちゃかわいい存在としては描かれていなくて、クラスの中にいる地味な女の子のひとりなんですよ。
でもめちゃくちゃかわいくて何考えてるかわからなくて現実にいたら絶対女子に人気のないタイプの女子なんですよ。
それは主人公の目線で見てるからかもしれませんけど、小谷はかわいくて魅力的でしょうがないんですよ。
まあ、なんていったらよいか、ホラ、ぼくら男って「ヤラせてくれる女の子」が大好きじゃないですか。だから山下ののめりこみ度合いも分かっちゃうんです。
でもって山下が言うように「身体を手に入れたら全部ほしくなっちゃう」わけですよ。
 
そういう独占欲とか嫉妬とか青臭さとか、大人への対しての叶わなさなんてものを、ぼくは全部抱え込んで生きていたし、山下もそうやって生きてるんですよね。
そういうのも込みで全部わかる。ほんとに、全部わかる。痛いくらい。
ていうかもう胸が痛い。
 
高校生の時に読んだらもっと「山下は俺だ!小谷許せない!」と鼻息を荒くして読んでいたかもしれません。
でももうそこまでは若くないので、小谷の気持ちも少しだけわかるし、もう少し落ち着いたものの見方もできる、と思います。
 
で、山下ってものすごく滑稽なんですよ。
 
恋そのものが滑稽だ、なんて話もありますけど、そういうわけでもなくて、例えば小谷に対して「俺が一番になる!」と宣言するシーン。
対する小谷は特に感慨もなく「(前にも誰かに言われたな―)」と澄ましている。
この落差、たまんないっす。
気持ちさえあればなんとかなる、こっちの努力次第で彼女を振り向かせられる、そんなふうに考えていた時代が、ぼくにもありました。
当時は本当にそれができると思っていましたし、実際にそれに向かって頑張ってたりしました。
だから山下はものすごく自分に近い存在になんですけど、もう通ってきた道だからその痛さが身にしみてわかるんですよね。
痛さというかイタさというか、それが実らないことを知っているから滑稽に映ってしまうんですよねどうしても。
絶対にフラれるのがわかってるのに、見られずにはいられない。
 
これを読んでる人って、「小谷が山下のことだいすきになってハッピーエンドを迎える」っていう終わりを望んでないような気がするんですよ。
「君が届け」みたいにハートフルなのは求めてないんですよ。
ぐああああぁぁぁこれはきつい!これはきついぞぉぉぉぉっていうのを求めてる人ばっかりだと思うんですよ。
フラれるのを楽しむと言いますか、片思いを楽しむと言いますか。
片思いが一番楽しいだなんて訳知り顔で言い出す人もいますけどね。
山下君はずっと片思いなんです。 たぶん。
滑稽だけど、一途な(一途だから滑稽なんだろうけど)山下君に自分を重ねてしまうんですよ。
世の中の男性は!そして自分も! 

変わってほしいと思うのは悪いこと? 

「本当に今のあたしがイヤなんだね」 
物語の中で、自分だけを見てほしいと望む山下に小谷が言うセリフ。
このセリフ、めっちゃドキッとしました。小谷に自分だけをみてほしいと望むことは、確かに今の小谷の否定になってしまうんですよね。
小谷が生きてきたのは、好きな時に好きな人とセックスをする生き方なんです。
小谷はそれを「もらえるものは全部もらってきた」というような例えをしてるんですけど。
好きな人には自分の好みの生き方をしてほしいと思うのは、自然なことかもしれません。
恋人に対して、もっとこうしてほしいとか、これはしないでほしいとか、望むことはけっこう普通のことですよね。
でもそれが自分のすきなひとのとっても重要なことだったら?
でも自分がどうしても譲れないことだったら?
自分が好きになった人は、自分が好きなところだけを見ようとしていたからではないのか? 
 と、考えてしまいます。
山下には山下が思う幸せがあって、その幸せのなかで小谷と幸せになりたい。
でもその幸せは小谷には馴染まないかもしれませんし、そもそも小谷が変わることによっ彼女を彼女たらしめている何かを失ってしまうかもしれません。
結局、自分の幸せの尺度でしか生きていけないんですよね、それこそ人生観でも変わる体験でもなければ、その尺度を変えることは難しい。
幸せのものさしが違うふたりが出会って、がんばって縦にしたり横にしたりしてみるけど、どうにもはまらない物語、なのかもしれません。
 
 ぜんぜん魅力をアピールできていない気がしますが、全3巻ですぐにもやもやできるのでぜひ読んでみてください!

 あ、あと、講談社のサイトで試し読みもできます。

まだまだ何かが言える気がするので、たぶん蛇足を書くと思います。

morning.moae.jp

あそびあい(1) (モーニング KC)

あそびあい(1) (モーニング KC)

 

 

追記:蛇足を書きました。

 

morojun.hatenablog.com