「きのう何食べた?」 ゲイの風景ってこういうことなのか!
こんにちは モロヅミです。
主語が大きくてすみません。
今回はよしながふみさんの男性同性愛同棲料理漫画『きのう何たべた?』の紹介です。
こちらは同棲しているゲイのふたりが暮らしているさまを覗き見る(主に料理部分)という漫画です。
大げさではなく、この本を読んでからゲイに対しての見方が変わりました。
というか、ぼくはわりと優等生で、「差別はいけないぞー」と本気で考えながら実際にそういうかたがたに出会うと何ともいえない感情を抱いていました。
体験も足りていなかったし、どういうものかわかってなかったんですね。
その点、この漫画ではものすっごく普通にゲイが出てくるんです。
普通に、といってしまうと語弊があると思うんですが、なんというか、ぼくが今までで読んできたものや見てきたものでは「これが同性愛者だ!!」とか「禁断の愛・・・」といったような修飾がたくさんついていたように思えるんですね。
ある種のパワーや主義を作品に載せないと表現できなかったという意味もあるのかもしれませんが。
この作品には、そういったものは出てきません。ただ普通のおっさん(といってもイケメンふたり)が同棲して料理つくっていちゃいちゃするだけです。
この漫画は「ゲイ漫画だ!」と声高に叫ぶのではなくて、「まあ、こういうもんだよ」と日常の延長線として描いています。
僕がこの作品に変えられてしまったのは、こちらのシーンです。
主人公ふたりがオシャレなカフェに行ったときのことです。
店内の女性客がふたりを指さしてきゃっきゃっしている描写があるんですが、それに対してものすごくイラッとしたんです。
びっくりしました。
今まで自分がきゃっきゃっしている側にいた事を気付かされました。
今までは自分はそんなことしない、と思ってたのにも関わらず。
それから、僕は同性愛者に対して好奇の目で見るのを辞めました。今までもしていたつもりはないですが、体験として理解して出来た気がしたからです。
そして同時に、物語の力の凄まじさを思い知りました。
以前、こんな話を読んだことがあります(確か内田樹の本のどこかだったような)
アメリカである戦争映画を上映したときのこと、燃料が足りず、このままでは目的地に無事着けないことがわかった。
そこで、船長は仕方なく黒人奴隷を海に捨てた。
海に向かって黒人をぽんぽんと放り込むシーンで、拍手喝采が巻き起こったそうです。
拍手をしている観客には黒人も混じっていたそうです。
物語の中の登場人物に自分を投影し、その時は白人側の気待ちになってるんですね。
この話を聞いた時、「そんなことあるんかなー」って思ってたんですけど、バッチリありました。
自分も、彼らの気持ちに寄り添っていました。
いわゆるストレート、異性愛者はマジョリティであり、なかなかセクシャルマイノリティの気持ちを理解することは難しいです。
でも、物語の力を借りればそんなことも出来てしまう。
くるりと視点を変えるだけで、新しい自分に出会うこともあるわけです。
そんな難しいことを考えなくても、主人公のシロさんが料理をてきぱきと作っていく様を見ているだけで気持ちよくなれますし、出てくる料理はどれも自分で作れるものなので、料理漫画としても優秀です。
個人的なお気に入りは、「アスパラの卵のエビチリソース炒め」「肉豆腐」「酸辣湯」です。
『きのう何食べた?』はオススメです。